そろえる練習ほど手の速さにつながるという野菜の切り方をめぐる逆の道理
そろえる練習が遠回りに見えてしまう最初の時期
野菜の切り方をそろえる練習は、はじめのうち、ただ時間がかかるだけの作業のように感じられます。太さを見比べては切り直しているうちに、まわりの人よりも手が遅れていくような気がしてしまいます。
それでも教員は、そろっていない材料を鍋に入れたときに何が起きるかを、目の前でやって見せます。太い部分と細い部分では火の入り方が違ってしまい、ひと皿の中で食感が大きくばらついてしまいます。
そろえる基準として使うのは物差しではなく、自分の指の幅や親指の関節までの長さだと教わります。体の中にある目盛りを覚えておくと、道具に頼らずに同じ形を何度でも出せるようになっていきます。
切ったものは板の上に並べて置き、上から眺めて幅がそろっているかを自分で確かめる時間があります。並べた景色を見れば、どの向きの切り込みが乱れているのかが、思いのほかはっきりと見えてきます。
形をそろえた先で手の速さが変わっていく理由
形がそろってくると、材料をつかむ手の位置も自然と決まってきて、迷いの時間が消えていきます。一回ごとに考えていた動きが続けざまに出るようになり、結果として手の速さが上がっていきます。
火にかけたあとの手間が減ることも、そろえる練習が速さにつながっている大きな理由のひとつです。取り出す時期をずらして調節する必要がなくなり、鍋の前で立ち止まる場面が少なくなっていきます。
盛り付けの場面でも、形のそろった材料は器の上に置くだけで整って見えるという利点があります。向きを直しながら並べる時間がいらなくなり、仕上げにかけられる余裕が増えていくのを感じます。
調理師専門学校では、この遠回りに見える練習が資格の実技にも通じていると繰り返し教わりました。料理の出来を左右するのは特別な技ではなく、同じ形を出し続ける手の安定なのだと分かってきます。
まとめ
そろえる練習は、速く作ることから遠ざかる作業のように見えて、実際には手の速さを支える土台になっています。目の前の一本に時間をかけておいた分だけ、後から続く工程で立ち止まる回数が減っていくという形になっています。
急いで切った日と、幅を確かめながら切った日を比べると、仕上がりまでの時間はほとんど変わりませんでした。それどころか作業の後半の落ち着き方が違っていて、最後の盛り付けまで気持ちに余裕が残っていたと感じます。
手を速くしたいと願っている人ほど、まずは形をそろえるところへ立ち返ってみると、道が開けるように思います。遠回りに見えるこの練習の中にこそ、後に続く工程をまとめて軽くしてくれる仕組みが静かに組み込まれています。