塩をひとつまみ入れる場面だけに現れる調理師専門学校ならではの緊張

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指先でつまんで散らすときだけに流れる空気

塩を入れる場面になると、それまで話し声のあった実習室が、急に静かになるのを何度も感じました。ほかの材料と違って、入れてしまえば取り出すことができないという事情が、そこには関わっています。

入れ方としてまず習うのは、器から直接落とすのではなく、指先でつまんでから散らすという形です。指で受け止めることで、自分が今どれくらいを手にしているのかを、体の感覚として確かめられます。

散らすときには、手を材料の少し上へ持ち上げて、面全体へ広がるように動かすようにと言われます。低い位置から落としてしまうと一か所に固まってしまい、混ぜても均一になりにくくなってしまいます。

入れる時期についても、材料の状態を見てから決めるようにと、細かく確かめる時間が置かれています。同じ量でも入れる時期が違えば仕上がりが変わってくるので、そこは急がずに見極めるように習います。

戻せない一手だからこそ丁寧に教わる入れ方

戻せない一手であるという性質は、緊張を生む一方で、集中の質を上げてくれる面も持っています。ここだけは他人任せにできないため、班で作業していても、必ず一人が責任を持って手を動かします。

入れたあとには、必ず味を見て、そこから次にどうするかを決めるところまでがひと続きになっています。足りないと感じたときも、一度に足さずに少しずつ寄せていく形を取ると、行きすぎを避けられます。

この場面だけは教員が近くに立って、指の動きと手の高さを見てくれることが多いように思います。言葉で説明しにくい加減が関わっているため、実際に手を動かすところを見せてもらう形になります。

調理師専門学校でここまで丁寧に扱われるのは、資格を取ったあとの現場でも同じだからだそうです。料理の仕上がりを決める最後の判断が、この短い動作に集まっているのだと教わり、納得しました。

まとめ

塩を指でつまんで散らすというごく短い動作には、ほかの工程には見られない特別な空気が確かに流れています。後から取り消すことができないという一点だけで、手の動きも、そこに向かう気持ちの張りつめ方も変わってきます。

指でつまむ、少し高い位置から散らす、入れたあとに必ず味を確かめるという流れは、どれも理由のある形でした。どれかひとつを省いてしまうと途端に加減がぶれてしまうため、そろえて覚えておく値打ちがあるのだと思います。

実習の中でこの場面に自分で立ち会えるのは限られた回数だけなので、一回ごとを大切に扱ってほしいと思います。手の中に残る感覚を覚えて帰ることができれば、道具のない場所でも同じ加減を出せるようになっていくはずです。

Goffredo