火加減を任される前に何度も繰り返した地味な作業という調理師専門学校の実情
火の前に立つまでに積み重ねた地味な下準備
火を扱う実習が始まる前に、まず鍋を空のまま持ち上げて動かす練習が用意されていて驚きました。重さと持ち手の位置を体で覚えておかないと、中身が入った鍋を安全に扱えないと教わったからです。
次に習ったのは、鍋を火にかける前に材料と道具を手の届く場所へすべてそろえておく段取りでした。火をつけてから道具を探しはじめると、その間に鍋の中が進んでしまい、取り返しがつかなくなります。
点火と消火の手順そのものにも決まった形があり、順番を声に出して確かめながら練習を重ねました。何気ない動作に見えても、迷いなく手が動くようになるまでには思った以上の回数がかかりました。
鍋のふちに柄を向けたまま置かないという決まりも、はじめの授業で体に入るまで繰り返されました。通りかかった人の腕が当たる形になり、鍋が動いてしまう場面を避けるための決まりだと聞きます。
火加減を任される日までに変わっていく手つき
火の強さを目で見て言葉にする練習では、炎の広がり方を見比べながら弱いか強いかを言い当てます。最初は違いが分からなかったのに、何度も見ているうちに手が勝手に調節するようになっていきました。
鍋の中から立つ音を聞き分ける練習もあり、静かなときと勢いのあるときの違いを耳で覚えていきます。目を離した一瞬でも音が変われば気づけるようになり、余裕を持って手を動かせるようになりました。
調理師専門学校で火の扱いが後回しにされていたのは、危ないからというだけではないと感じています。体の使い方が定まらないうちに火の前へ立っても、鍋よりも自分の姿勢に気を取られてしまうからです。
資格を目指す道のりの中で、火に触れない日々が長かったことを当時は物足りなく思っていました。けれども実際に任される時期が来たとき、料理の手順が驚くほど落ち着いて進んでいて納得しました。
まとめ
火の扱いを覚える順番は、思い描いていた流れとまったく違っていて、最初のうちは戸惑いも小さくありませんでした。鍋を持つ、道具を並べる、音を聞くという地味な段階が先に置かれていた意味は、後になって分かってきました。
打ち明けてしまえば、早く火の前に立ちたいと焦っていた時期があり、下準備の時間を軽く見ていた自分がいました。その焦りを通り過ぎた今は、示された順番を守って積み上げた分だけ手が動くようになると素直に感じられています。
これから学ぶ人には、火に触れられない日々こそ、後で効いてくる時間だと知っておいてほしいと思っています。順番のひとつひとつに理由があると分かってくると、地味に見えた練習の景色まで少しずつ変わってくるはずです。